公的年金の繰り下げはお得か?

将来の年金の減額が予想されるなか、年金額を増やすことができる「公的年金の繰り下げ受給」がマスコミでも取り上げられるようになってきています。

 

 

老齢基礎年金、老齢厚生年金の支給開始年齢は原則として65歳ですが、どちらも66歳以降70歳まで1ヵ月単位で受給を繰り下げて年金を増やすことができます。

ちなみに、自営業者が受け取ることができる年金は老齢基礎年金のみですが、サラリーマンや公務員は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を受け取ることができます。

 


〇老齢基礎年金・老齢厚生年金の繰り下げ受給の増額率

タイトル        自営業者             サラリーマンや公務員

65歳 100%   老齢基礎年金月額65,000円   老齢基礎+老齢厚生月額180,000円と仮定

66歳 108.4%          70,460円             195,120円

67歳 116.8%          75,920円             210,240円

68歳 125.2%          81,380円             225,360円

69歳 133.6%          86,840円             240,480円

70歳 142%           92,300円             255,600円

上記表のとおり、60歳受給を70歳受給に繰り下げると、なんと42%もの増額になります。

 


〇損益分岐点
年金の繰り下げ受給は、増額された年金が生涯にわたってもらえますが、例えば、受給開始前に死亡してしまった場合や、受給後しばらくして死亡した場合には、結果として、繰り下げ受給しないほうがよかったということになります。では、いったい何歳まで生きれば、繰り下げ受給のほうが得になるのでしょうか?答えは、受給後12年以上長生きすれば得になるといわれています。70歳から受給すれば、82歳まで生きれば得になります。

平成29年度簡易生命表によると65歳の平均余命は、男性19.57年、女性24.43年。平均余命を考慮すると、70歳まで繰り下げても特になるということです。

 


〇注意点
次に注意点をみていきます。特に厚生年金加入者の方は気をつけてください。

①加給年金・振替加算(厚生年金加入者)
厚生年金の加入期間が20年以上ある人は、65歳到達時点で、65歳未満の配偶者または18歳未満の子どもがいる場合、「加給年金」と「振替加算」という年金がもらえます。年金の扶養手当みたいなものです。ここでは、65歳未満の配偶者についてだけ説明します。

・加給年金
受給する人(夫)が65歳到達時点で、夫に生計を維持されている65歳未満の配偶者(妻)がいる場合、妻が65歳になるまで加給年金を受け取ることができます。年額224,300円(月額18,690円)。さらに、特別加算として、妻の加給年金に年額165,600円がプラスされ、合計年額389,900円がもらえることになります。年の差が大きい年下の妻がいればより多くの加給年金がもらえることになります。

夫と妻の年齢差が2歳の場合 →約80万円

夫と妻の年齢差が5歳の場合 →約200万円

該当する人には有難い制度ですが、繰り下げ受給する人は、待機中に加給年金を受け取ることはできません。受給開始時点で、妻の年齢が65歳未満でなければ加給年金は受け取れないことになります。また、加給年金は、繰り下げによる増額はありません。

・振替加算
次に振替加算についてみていきます。
妻が65歳になった時点で、夫の老齢厚生年金に加算されていた加給年金(特別加算含む)は打ち切られます。その代わりに、妻の老齢基礎年金に「振替加算」が支給されます。支給額は、妻の生年月日により異なります。加給年金に比べるとかなり少ない金額になります。

1958年(昭和33年)4月2日~1959年(昭和34年)4月1日  年額32,972円

1959年(昭和34年)4月2日~1960年(昭和35年)4月1日    26,916円

1960年(昭和35年)4月2日~1961年(昭和36年)4月1日    20,860円

1961年(昭和36年)4月2日~1966年(昭和41年)4月1日    15,042円

1966年4月2日以降 なし

繰り下げ受給待機中に、妻が65歳になっても振替加算を受け取ることはできません。繰り下げによる増額もありません。

 

②遺族厚生年金(厚生年金加入者)
老齢厚生年金を繰り下げ受給していた人や繰り下げ受給待機中の人が亡くなった場合、遺族が受給する遺族厚生年金の額は、繰り下げ受給によって増額される前の金額に基づいて計算されます。

 

③特別支給の老齢厚生年金(厚生年金加入者)
受給者の生年月日と性別により、65歳になるまでに老齢厚生年金(老齢基礎年金は含まない)を受け取ることができる人たちがいます。年金の支給開始年齢を60歳から65歳に変更した際の移行措置としての制度です。この時期に受け取れる老齢厚生年金を、本来の老齢厚生年金と区別して、「特別支給の老齢厚生年金」といいます。特別支給の老齢厚生年金の繰り下げ受給はできません。

 

④在職老齢年金(厚生年金加入者(厚生年金加入者)
在職老齢年金とは、働きながら(厚生年金に加入)老齢厚生年金をもらう場合、ある一定基準以上の報酬額を貰うと、年金額が一部支給停止になったり、全額支給停止になる制度です。頑張って働いても、年金がへらされるんじゃ・・・ということで、働く意欲をなくす人もいるのではないでしょうか。

60歳~65歳未満 → 老齢厚生年金+報酬の合計が28万円を超えると減額の対象になります。

65歳以上 → 老齢厚生年金+報酬の合計が46万円を超えると減額の対象になります。

65歳以上は、合計額が46万円と高額になるので、該当する人は、会社役員など一部の人に限られると思います。

老齢厚生年金の繰り下げ受給で増額の対象となるのは、本来貰える減額される前の年金額ではなく、本来貰える年金額から在職支給停止額を差し引いた金額になります。支給停止額が大きい人ほど、これだけしか増えないの?ということになってしまいますので、ご注意ください。

 

⑤税金・社会保険料
年金が増えると、それに対する税金や国民健康保険料、介護保険料も増えます。繰り下げ受給によって増額された年金額分がそのまま手元に残るわけではありませんのでご注意ください。

 


以上をまとめると、公的年金の繰り下げ受給では、老齢厚生年金受給者が注意を要する。繰り下げ受給は、老齢基礎年金だけ繰り下げるという選択も可能なので、繰り下げ受給を検討する際は、必ず年金事務所に相談に行ってください。

それにしもて年金制度はややこしいですね。年金事務所に相談に行っても頼りない担当者もいますので、そういう場合は、2か所で聞かれるとよいと思います。

 

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