エンディングノートの書き方、「お葬式」のページについて書きました。

親のお葬式のとき、どこの葬儀会社へ依頼すればよいのかで困った、あるいは、よくわからないの
で、とにかく葬儀会社のいうとおりにしていたら、後から請求額に驚いたという人も多いのではな
いでしょうか?自分のときは、遺族に迷惑をかけたくないという思いから、最近では、自分のお葬
式を、予め、葬儀社などに予約しておく人も増えています。生前予約といいます。
まずは、最近のお葬式事情はどうなっているのかからみていきましょう。

●家族葬

都市部では60%以上が家族葬といわれています。参列者は、家族を中心にごく親しい人たちだけ
で、10~30人程度の規模のものが多いようです。お通夜、告別式とも行います。よく似たものに密
葬がありますが、密葬は、親族だけで火葬を行い、後日、お別れの会などを行うことを前提として
行うものです。家族葬が増加している背景には、地域の人たちとの関わりが少なくなったことや、
故人とゆっくりお別れがしたい、費用を抑えたいと思う人が増えているからです。
家族葬には、費用を抑えられる、故人とゆっくりお別れができるというメリットがありますが、一
方で、デメリットもあります。家族葬に呼ばれなかった親戚から責められたり、故人が生前おつき
合いの広い人だと、あとから弔問客がたくさん来て、相手をするのが大変だったというようなこと
もあります。
●直葬(ちょくそう)
病院で亡くなった後、そのまま火葬場に行って、火葬されます。火葬場で、お経を読んでお別れす
るサービスもあります。お通夜・葬儀は行いません。東京都では、5人に1人が直葬ともいわれてい
ます。経済的に厳しい人が直葬を選択するケースが多いようですが、葬儀に対する意識の変化(死生
観の変化)から、直葬を選択する人もいます。
注意点としては、菩提寺に納骨する場合は、事前に菩提寺の了解を得ておかないと、納骨を認めて
くれないケースもあるということです。納骨を認めない菩提寺の考え方は、仏教は、お通夜、告別
式を儀式として行うもの。その儀式をおろそかにする人の納骨は行わないというものです。菩提寺
と檀家の関わりが希薄になり、日頃から、お互いが連絡をとる機会もないことから、檀家は、葬儀
が終わってから、当たり前のように納骨をお願いする、それに対して、菩提寺は、無礼な檀家だと
感情を害してしまう。こうなると、後から関係を修復するのは、非常に難しくなってしまいます。
直葬を選択する人は、そのあたりも考えるようにするのがよいでしょう。また、直葬の場合、遺族
が、「あれでよかったのだろうか」と、あとで後悔することもあるそうです。
●一日葬
お通夜はなしで、葬儀と火葬を一日で行うものです。こちらも、事前に菩提寺の了解を得ておかな
いと、納骨を認めてもらえない可能性があるので、注意が必要です。
●一般葬
昔からある葬儀形式。親族や近所の人々、友人、会社関係の人など、故人と関わりのある人が広
く葬儀に参列するものです。後から、弔問客の対応をする必要がないというメリットはあります
が、経済的な負担が大きい、忙しくてゆっくりお別れができないというデメリットがあります。
どの葬儀を選択しても、自分の葬儀のときには、自分はこの世にはいません。遺された遺族のこと
も考えて、できれば、家族と話し合いながら、決めるのがよいでしょう。最近は、趣向をこらした
個性的な葬儀を行う人も増えているそうです。家族と一緒に、思い出を語りながら準備する、これ
も遺された家族にとっては、かけがえのない時間になると思います。
●葬儀費用
お葬式についてみてきましたが、葬儀費用についても気になりますね。まずは、ご自身が亡くなっ
た場合の遺族(相続人)の立場から、葬儀費用をみてみましょう。亡くなった人の口座からお金は
下せるのでしょうか?
預金口座を持っている人が亡くなり、銀行がそのことを知ると、その人の口座は凍結され、お金は
一切引き出せなくなってしまいます。(銀行が知らなければ、いつも通り、下ろせます)葬儀費用
を引き出すために、銀行に走ったという話を聞いたことがあるのではないでしょうか?亡くなった
人の口座からお金を引き出すという行為は違法ですが、立て替えるお金がなく、やむを得ず下ろす
場合、後々のトラブルを防ぐために、①相続人が複数いる場合は、他の相続人に、事前に引き出す
ことの了解を得ておく、②かかった費用の領収書はすべてとっておき、自分のために使ったのでは
ないということを証明できるようにしておくことが大切です。相続は、ちょっとしたことから猜疑
心が生まれ、争いに発展することが多いです。あらぬ疑いをかけられないように、お金の取り扱い
には十分注意してください。また、亡くなった方に多額の借金がある場合は、注意が必要です。亡
くなった方の財産を勝手に下ろすと、相続を承認したものとみなされ、プラスの財産よりもマイナ
スの財産(借金)のほうが多い場合でも、相続放棄ができなくなる恐れがあります。葬儀費用だけ
ならまだしも、亡くなった方のカードローンの返済を行うために下ろすようなことは決してして
はいけません。(最終判断は、家庭裁判所が行います)
葬儀信託
最近では、葬儀信託という選択肢もあるようです。葬儀社が信託銀行と組んで行うものです。利用
者が葬儀社に葬儀費用を予め預け、そのお金を、葬儀社は信託銀行に預け、利用者が死亡したとき
に、相続人からの連絡を受け、葬儀終了後に、信託銀行から葬儀社に葬儀費用が支払われるという
仕組みのようです。一例公益社のHP (当事務所とは一切関係ありません)
●戒名
戒名は、故人が仏の弟子になった”しるし”として、葬儀の際に菩提寺(ご先祖のお骨が納骨されて
いるお寺)の僧侶につけてもらう名前のことです。位の高い名前をつけてもらうと、費用も高くな
ります。高いものでは、数百万円のものもあります。上記の直葬、一日葬のところで、葬儀(お通
夜、告別式)を行わない場合、納骨を拒否されることもあると書きましたが、これは、戒名をつけ
ないことに起因するものだとお考えください。仏教徒として葬儀を行う場合、仏の弟子になること
が前提条件になるのだから、戒名は必ず必要だというのが菩提寺の主張です。一方で、檀家側から
すると、普段、ほとんどつきあいのない僧侶に、ちょっと名前をつけてもらっただけで、数十万~
数百万円というお金を渡さなければならないのは、納得がいかないというものです。お寺によって
は、気持ちだけと言いながら、高額なお布施を強要するケースもあり、関係がこじれて争いに発展
することもあります。菩提寺と檀家の関係が薄れ、ただ何となく仏教形式で葬儀を行っている人に
とっては、戒名の存在自体が必要なのか、何でこんなに高いのかという疑問が湧いてくるのでしょ
う。最近は、葬儀社が僧侶と契約し、一律いくらという金額で戒名をつけてくれるところもありま
す。菩提寺がない、わからないという場合は、それでもよいでしょうが、菩提寺がある場合は、ト
ラブルになると、後々、大変な思いをすることにもなりかねませんので、是非とも、ご注意いただ
きたいと思います。
戒名は、生前につけてもらうこともできます。費用もそのほうが安いことが多いようです。既に戒
名をつけてもらっているという話も聞きます。戒名のことで、遺族に負担をかけたくないという方
は、生前に戒名をつけることを検討されるのもよいでしょう。
菩提寺のお坊さんが尊敬できる親切な方だったらよいですが、そうでない場合もありますよね。こ
んな場合は、どう考えるとよいのでしょうか?私自身も、答えがわかりません(ー_ー)!!
エンディングノートは、いろいろなことを考えながら、あるいは実行しながら書いていくと、相当
な時間がかかるものです。エンディングノートを書いていただいている方のご感想で、「いろいろ
と考えながら書いているのに、娘からは、まだできてないの?」と言われて困っているというもの
もあります。その方は、まずは鉛筆で下書きをしてから清書をと考えられているようで、まだ、下
書きの途中だそうです。それぞれのやり方で、書かれたらよいと思います。まずは、ダウンロー
ド、あるいは、製本版を購入するところから始めてくださいね。
書かれた方は、ご感想をお聞かせいただけると、うれしいです。