エンディングノート「介護など」のページ、認知症の財産管理について書きます。
将来、自分が認知症等になってしまった場合、お金の管理はだれがしてくれるのでしょうか?
今回は、家族が近くにいる場合についてみていきます。
認知症だと疑われるケース
一般的には、次のようなケースが多いです。本人が、通帳やカードを持って銀行に行きます。AT
Mでお金を下そうとして暗証番号を忘れて困っていると、銀行員に声をかけられます。しどろもど
ろの答えに、銀行員は、本人が認知症ではないかと疑います。そして、家族に、「ご本人の判断能
力が低下しているようですので、後見人をつけてください」という連絡があります。窓口で一度下
した定期預金を、何度も下しに行くような場合も、銀行は同じような対応をとります。
後見人とは?
こうなると大変です。家族にとっては「後見人って何?」というところから始まります。後見人と
は、本人の財産管理や法律的な行為(介護保険の契約など)を、本人に代わって行う保護者のこと
です。既に認知症になっている状況で後見人をつけるには、家庭裁判所に「後見人選任」の申立て
をして、後見人を選任してもらう必要があります。この制度を法定後見制度といいます。
「認知症の保護者には後見人がつく」という説明をしましたが、実は、判断能力の程度に応じて保
護者の種類にも3種類あります。後見人、保佐人、補助人です。
後見人(正式には成年後見人) → ほとんど判断することができない人を保護する
保佐人 → 判断能力が著しく不十分な人を保護する人
補助人 → 判断能力が不十分の人を保護する人
一番多く選任されているのが後見人ですが、「成年後見人の選任申立て」をしても、裁判所が保佐
人を選任する場合もあります。裁判所は、医師の診断書、申立ての記載内容などをもとに、審判す
ることになります。
後見人の仕事は?
後見人は、財産管理(日常生活に関する入出金、預貯金管理、不動産の管理・処分など)と、身上
監護(介護保険利用契約、入退院契約、施設入所契約など)を行います。後見人がつくと、生活費
以外の財産は、ほぼ凍結されると思ってよいでしょう。相続対策の贈与は認められません。株式売
買、不動産の売買等は、裁判所がやむを得ない事情と判断しない限り認められません。やむを得な
い事情とは、自宅を売却しなければ施設に入れない場合などです。
家庭裁判所への申立て
一般の人にとっては、家庭裁判所に行くということ自体が非日常のことで、とても不安に感じられ
ることでしょう。家庭裁判所でも、手続きの相談には応じてくれます。ただ、個人的な印象です
が、申込用紙一式渡されて、ビデオを見て終わりで、「何だかよくわからないな~」で帰る人も多
いような気がします。申込用紙をもらってもよくわからないという人は、専門家に申立てを依頼す
ることになります。
依頼する専門家は?
どこに相談に行けばいいのかわからない人も多いと思います。後見の申立ては、裁判所に提出する
書類なので、書類の作成を依頼したい場合は、弁護士、司法書士になります。人によっても異なり
ますが、一般的には、弁護士のほうが報酬は高くなります。できれば、後見業務に詳しい人がよい
でしょう。
費用をかけたくない、書類は自分で作成する、後見制度について教えてほしいという場合は、行政
書士でOKです。家族が認知症になると、そのお世話が大変になり、なかなか書類の作成まで手が
回らなくなります。予備知識として、後見制度について知っておくことは、心の余裕にもつながり
ます。ちょっと、聞いてみたいなという方は、無料相談をご利用ください。
後見人はだれがなる?
申立ての時点で、家族が後見人になりたい場合は、後見人の候補者名欄に、家族の名前を記入する
ことは可能です。ただし、現在は、ある一定の資産のある人には、専門職の後見人(弁護士・司法
書士等)が選任されることになっています。一定の資産がいくらなのかは、各家庭裁判所によって
判断が異なりますが、500万円以上、1,000万円以上などと判断するケースが多いようです。いわゆ
る資産家といわれる人でなくても、専門職の後見人がつくことになります。
専門職の後見人の場合、後見費用が発生します。本人の財産価額や管理の複雑さによっても異なり
ますが、毎月2万円~5万円程度かかることが多いです。(財産価額500万円で月2万円ということは
ないと思いますが)この費用も裁判所が決定します。家族の後見人による使い込みが増加したた
め、専門職の後見人が任命されるケースが増えたのですが、専門職による使い込み事案も増加して
いるようですので、注意が必要です。
「40代・50代から始める 遺族に迷惑をかけない失敗しないエンディングノートの書き方」を読んで、これからの課題をみつけていただきたいと思います。製本版はお問い合わせください。